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柔軟な働き方を実現するための措置 – 育児・介護休業法Q&A


医療関係者・元年金相談員のいる社労士事務所◆オフィス・スマート

柔軟な働き方を実現するための措置は、令和7年10月1日から義務になりました。「3歳を過ぎる子を育てる社員から、柔軟な働き方を使いたいと相談された。会社は何を用意すればよいのか?」。

厚生労働省は、令和7年度の法施行状況を公表しています。都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)分です。育児・介護休業法の相談件数は116,650件で、前年度比12.4%増でした。ただし、これは育児・介護休業法の相談全体の件数です。柔軟な働き方を実現するための措置だけの件数は、資料に記載がなく不明です。

本記事は、社員から申出があった場面を想定したQ&Aです。場面はすべて架空で、実際の相談内容ではありません。根拠は、育児・介護休業法と同法施行規則です。あわせて、厚生労働省のQ&A(令和7年9月24日時点)と解説資料を参照しました。

この措置を定める育児・介護休業法第23条の3の見出しは、「三歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置」です。

柔軟な働き方を実現するための措置の全体像

Q1.柔軟な働き方を実現するための措置として、会社は何を用意する必要がありますか?

(例示)従業員30名の製造業の場面です。2歳の子を育てる社員から、「3歳を過ぎてもフルタイムで働きたい」と相談されました。

A.3歳から小学校就学前の子を養育する社員に、5つの措置から2つ以上を講じます。社員は、その中から1つを選んで利用できます。

根拠は、育児・介護休業法第23条の3第1項です。事業主は、労働者の申出に基づく措置のうち、二以上の措置を講じなければなりません。

5つの措置は、次のとおりです。

なお、労使協定を結べば、引き続き雇用された期間が1年に満たない社員と、1週間の所定労働日数が2日以下の社員を、この措置の対象から外せます(育児・介護休業法第23条の3第3項、同法施行規則第75条の6)。養育両立支援休暇は、時間単位での取得が困難と認められる業務の社員を、時間単位の対象から外せます。労使協定の内容は、本記事では扱いません。

各措置の主な要件は、図1にまとめました。

図1

Q2.時差出勤とフレックスタイム制を両方用意すれば、「2つ」になりますか?

(例示)時差出勤とフレックスタイム制がすでにある会社の場面です。担当者が、「もう2つあるので大丈夫ですね」と尋ねています。

A.なりません。両方を用意しても、措置を2つ講じたことにはなりません。

「始業時刻等の変更」とは、1日の所定労働時間を変えないことを前提に、次のいずれかを指します。1つは、フレックスタイム制です。ただし、総労働時間を清算期間の所定労働日数で割った時間が、1日の所定労働時間と同じになるものに限ります。もう1つは、始業・終業の時刻を繰り上げ・繰り下げる制度(時差出勤)です。保育所等への送迎の便宜等を考慮した制度である必要があります。

すでに導入している制度を、措置として選択して講ずることは可能です。その場合も、過半数労働組合等から意見を聴く必要があります。措置の内容を追加・変更するときも、改めて意見聴取が必要です。

Q3.過半数労働組合等への意見聴取は、どのように行えばよいですか?

(例示)労働組合のない会社の場面です。担当者が、「誰の意見を、どう聴けばよいのか」と悩んでいます。

A.措置を講じる前に、過半数労働組合の意見を聴きます。組合がなければ、労働者の過半数を代表する者の意見を聴きます。聴き方に、法令上の定めはありません。

根拠は、育児・介護休業法第23条の3第4項です。事業主は、措置を講じる前に意見を聴かなければなりません。

Q&Aは、過半数労働組合等を通じて、労働者のニーズを適切に把握できるよう、丁寧にコミュニケーションを取ることが重要としています。

また、Q&Aは、労働者の意向等を十分に検討しても、事業の性質等から、労働組合から聴取した意見に沿えないことも生じ得るとしています。その場合は、労働組合と丁寧にコミュニケーションを取り、判断に至った事情等を説明することが考えられるとしています。なおこの記述は、労働組合の場合のものです。労働者の過半数を代表する者の場合の取扱いは、Q&Aに記載がありません。

柔軟な働き方を実現するための措置の選び方で迷いやすい点

Q4.養育両立支援休暇は無給でもよいですか?日数はどう付ければよいですか?

(例示)養育両立支援休暇を選ぶ会社の場面です。担当者が、有給にするか、日数をどう分けるか迷っています。

A.無給でも問題ありません。ただし、1年につき10労働日以上利用できる制度にします。

この休暇を措置とする場合は、1日の所定労働時間を変更せずに利用できるものにします。育児目的休暇とは別に設定し、原則として時間単位で利用できるようにします。子の看護等休暇、介護休暇、労働基準法第39条の規定による年次有給休暇として与えられるものは、この休暇に当たりません(育児・介護休業法第23条の3第1項第4号)。

取得理由は、就業しつつ子を養育するのに資するものであれば、労働者に委ねられます。

無給でよいのは、取得期間は労務を提供しないためです。企業独自に有給とすることは、差し支えありません。

日数の配分は、1年以内の期間で設定しても差し支えありません。たとえば、6か月ごとに5日と設定する方法や、1か月ごとに1日と設定する方法があります。ただし、1年単位でみて計10労働日以上が確保されていなければ、認められません。

5つの措置のどれについても、事業主は、労働者が措置の申出をしたことや、措置が講じられたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(育児・介護休業法第23条の3第7項)。

Q5.現場や部署によってテレワークができません。職種ごとに措置を変えてよいですか?

(例示)交替制勤務の製造現場と事務部門がある会社の場面です。経営者が、「現場ではテレワークができない」と考えています。

A.変えても差し支えありません。労働者の個々の事情による求めに応じて措置することまでは義務とはしていませんが、職種や配置等から利用できないことがあらかじめ想定できる措置を講じても、措置義務を果たしたことにはなりません。

Q&Aは、事業所単位、ライン単位、職種ごとに措置してもよいとし、業務の性質や内容等に応じて、組合せを変えることが望ましいとも述べています。

交替制勤務の労働者も、措置の対象です。Q&Aは、一般論として次の例を挙げています。早番9時~17時、遅番13時~21時の勤務で、通常はどちらの時間帯も一定割合以上の勤務が求められる場合です。希望者に早番のみを認める措置は、「始業時刻等の変更」を措置したことになります。

早番と遅番で始業・終業の時刻が異なるだけでは、「始業時刻等の変更」を措置したことになりません。交替制勤務の職場で、テレワーク等が業務の性質上困難な労働者については、Q&Aは、他の4つの措置から2つ以上を選んで措置することが求められるとしています。

Q6.パート社員や管理職にも、同じ措置が必要ですか?

(例示)パート社員と課長がいる会社の場面です。担当者が、「どちらも対象外ではないか」と考えています。

A.どちらも原則として措置の対象です。

パート社員など、契約上の1日の所定労働時間が6時間以下の人も対象です。6時間以下であることをもって、短時間勤務制度を講じたことにはなりません。

正規・非正規で措置の組合せを変える場合は、パートタイム・有期雇用労働法により、不合理な待遇差に当たらないようにすることが求められます。差異の理由を、労働者に合理的に説明できなければなりません。

労働基準法第41条第2号の管理監督者も、対象です。管理監督者であることをもって、「所定労働時間の短縮」や「始業時刻等の変更」を措置したことにはなりません。

「管理職」と呼ばれていても、同号の管理監督者に当たるかどうかは、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきとされています。当たらない管理職が、事業主が講じた「所定労働時間の短縮」の利用を申し出たときは、その措置を講じなければなりません。

柔軟な働き方を実現するための措置の個別周知・意向確認と申出への対応

措置を用意したあとは、個別の周知と意向確認が必要です。なお、子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間には、これとは別に、勤務時間帯や勤務地などの個別の意向聴取と配慮も義務づけられています(育児・介護休業法第23条の3第6項)。本記事では扱いません。

Q7.個別の周知・意向確認は、いつ、何を、どの方法で行えばよいですか?

(例示)2歳の子を育てる社員がいる会社の場面です。

A.子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間に、措置の内容などを個別に知らせ、意向を確認します。方法は、面談、書面の交付、FAX、電子メール等のいずれかです(FAX・電子メール等は、労働者が希望した場合のみ)。

根拠は、育児・介護休業法第23条の3第5項と、同法施行規則第75条の8です。時期は、子が1歳11か月に達する日の翌々日から、2歳11か月に達する日の翌日までの1年間です。たとえば3月15日生まれの子は、1歳の2月16日から2歳の2月15日までです。

知らせる事項は、措置の内容、申出先、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限に関する制度の3つです。

電子メール等は、労働者が記録を出力して書面を作成できるものに限ります。面談は、オンラインでも差し支えありません。ただし、厚生労働省の解説資料は、対面と同程度の質の確保が必要で、音声のみの通話は面談に含まれないとしています。

なお、日々雇用の労働者(1日単位の労働契約で雇われ、その日の終了によって契約も終了する労働者)など、今後措置を利用する可能性がない場合は、個別の周知・意向確認を実施する必要はありません。

図2

Q8.面談を記録に残す必要はありますか?上司が行ってよいですか?対象者を集めて説明してもよいですか?

(例示)対象の社員が複数いる会社の場面です。

A.面談の記録義務はありません。ただし、必要に応じて作成することが望ましいとされています。所属長や直属の上司が行うことも、対象者を一堂に集めて行うことも、条件を守れば差し支えありません。

面談は、書面の交付や電子メールの送信と異なり、記録が残らないためです。

所属長や直属の上司が行う場合は、事業主から委任を受けていることが前提です。意向を表明しにくい状況にならないよう、実施する上司に、制度の趣旨や適切な実施方法等を十分に周知しておくことが重要とされています。

対象者を一堂に集めて行う場合も、面談や書面の交付などの方法に従う必要があります。個別に書面を交付するなどの配慮が望ましく、個々の労働者が意向を表明しやすい方法にする必要もあります。

Q9.利用の申出は「1か月前まで」としてよいですか?使い始めた後に別の措置へ変えたいと言われたら、どうしますか?

(例示)申出の受付方法を就業規則に定めたい会社の場面です。

A.申出の期限は、法律上の定めがありません。利用開始後の措置の変更を認めることも、法律上特に義務づけられてはいません。「1か月前まで」としてよいかは、Q&Aは示していません。

期限を指定する場合は、就業規則等であらかじめ明らかにする必要があります。申出を行う労働者にとって過重な負担を求めることにならないよう配慮しつつ、適切に定めることが必要です。また、Q&Aは、過度に煩雑な手続や早すぎる期限を設定するなど、措置の適用を受けることを抑制し、ひいては法律が措置を義務づけた趣旨を実質的に失わせるものと認められる手続は、許容されないとしています。

個別の周知・意向確認では、申出をしないように抑制することは、行ってはなりません。不利益をほのめかすことや、前例がないことをことさらに強調することも、同じです。

利用開始後に家庭や仕事の状況が変わることもあるため、定期的に面談等を実施することが望ましいとされています。利用している措置が、就業しつつ子を養育することを実質的に容易にする内容でなければ、変更を含め柔軟に対応することが望ましいとされています。

まとめ:柔軟な働き方を実現するための措置で押さえたい3点

当事務所では、就業規則・育児介護休業規程の見直しや、措置の選び方、意見聴取・周知の運用について、ご相談をお受けしています。判断が分かれる点は、お問い合わせください。

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本記事は、2026年10月4日時点の公的資料にもとづいています。

参考(公的機関の資料)

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