障害認定基準について
適用となる疾患例
うつ病,躁うつ病(双極性障害),統合失調症,てんかん,知的障害,発達障害(自閉スペクトラム症/自閉性スペクトラム障害(ASD),注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD),限局性学習症/限局性学習障害(SLD)など),脳血管障害(脳梗塞,脳出血など),頭部外傷後遺症,認知症 など
※認定基準に該当する障害が起こる疾患はすべて対象となる。
診断書の種類
精神の障害用(様式第120号の4)
最近の改正など
- 2011(平成23)年9月に知的障害を中心とする認定基準の改正があり,発達障害の定義がなされた。
- 2013(平成25)年6月の認定基準改正で,高次脳機能障害の定義がなされた。
- 2016(平成28)年9月より,適正な認定を行うための『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』(等級ガイドライン)の運用開始。
「精神の障害の程度は,その原因,諸症状,治療及びその病状の経過,具体的な日常生活状況等により,総合的に認定するもの」として,
1級 ▶ 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 ▶ 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 ▶ 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの,及び労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
障害手当金 ▶ 労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
としている。
また,「精神の障害は,多種であり,かつ,その症状は同一原因であっても多様である」として,
「認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに,その原因及び経過を考慮する」としている。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン(等級判定ガイドライン)
この『等級判定ガイドライン』は,精神障害及び知的障害に係る認定において,障害等級の判定時に用いる目安や考慮すべき事項の例等を示すものであり,これにより,精神障害及び知的障害に係る認定が「国民年金・厚生年金障害認定基準」(平成14年3月15日庁保発第12号。以下「障害認定基準」という)に基づき適正に行われるよう改善を図ることを目的とする,とされている。
※てんかんは,対象外とされている。
障害等級の目安
- 「日常生活能力の程度」の評価と「日常生活能力の判定」の平均との整合性が低く,参考となる目安がない場合は,必要に応じて診断書を作成した医師(以下「診断書作成医」という。)に内容確認をするなどしたうえで,「日常生活能力の程度」及び「日常生活能力の判定」以外の診断書等の記載内容から様々な要素を考慮のうえ,総合評価を行う。
- 障害等級の目安が「2級又は3級」など複数になる場合は,総合評価の段階で両方の等級に該当する可能性を踏まえて,慎重に等級判定を行う。
➡ 具体的には,診断書の「日常生活能力の程度」の5段階評価と,「日常生活能力の判定」の7項目の評価を数値化した平均値を,「障害等級の目安」に当てはめたものが,『等級の目安』とされる。ただし,この『等級の目安』は等級認定の参考とされるが,総合評価の結果,目安と異なる認定結果となる場合もある。
日常生活能力の程度
診断書①欄の「障害の原因となった傷病名」に,《知的障害》が含まれる場合(または,発達障害などで知的障害を伴っていて,《知的障害》の方が本人の状態を適切に評価できる場合)は,《知的障害》欄で判定する。
《精神障害》の場合
(1)精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが,社会生活は普通にできる。
- 適切な食事摂取,身辺の清潔保持,金銭管理や買い物,通院や服薬,適切な対人交流,身辺の安全保持や危機対応,社会的手続きや公共施設の利用などが自発的にできる。あるいは適切にできる。
- 精神障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることができる。
(2)精神障害を認め, 家庭内での日常生活は普通にできるが,社会生活には援助が必要である。
- (1)のことが概ね自発的にできるが,時に支援を必要とする場合がある。
- 例えば,一人で外出できるが,過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難となる。
- 日常的な家事をこなすとはできるが,状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。身辺の清潔保持は困難が少ない。ひきこもりは顕著ではない。自発的な行動や,社会生活の中で発言が適切にできないことがある。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい。金銭管理は概ねできる。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。
(3)精神障害を認め,家庭内での単純な日常生活はできるが,時に応じて援助が必要である。
- (1)のことを行うためには,支援を必要とする場合が多い。
- 例えば,医療機関等に行くなどの習慣化された外出は付き添われなくても自らできるものの,ストレスがかかる状況が生じた場合に対処すること困難である。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために,助言などの支援を必要とする。身辺の清潔保持が自発的かつ適切にはできない。対人交流が乏しいか,ひきこもっている。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。ストレスが大きいと症状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。
(4)精神障害を認め,日常生活における身のまわりことも,多くの援助が必要である。
- (1)のことは,経常的な援助がなければできない。
- 例えば,親しい人間がいないか,あるいはいても家族以外は医療・福祉関係者にとどまる。自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。些細な出来事での病状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。
(5)精神障害を認め,身のまわりのこともほとんどできないため,常時の援助が必要である。
- (1)のことは援助があってもほとんどできない。
- 入院・入所施設内においては,病棟内・施設内で常時個別の援助を必要とする。在宅の場合においては,医療機関等への外出も自発的にできず,付き添いが必要であったり,往診等の対応が必要となる。家庭生活においても適切な食事を用意したり,後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず,常時の援助を必要とする。
《知的障害》の場合
(1)知的障害を認めるが,社会生活は普通にできる。
- 適切な食事摂取,身辺の清潔保持,金銭管理や買い物,通院や服薬,適切な対人交流,身辺の安全保持や危機対応,社会的手続きや公共施設の利用などが自発的にできる。あるいは適切にできる。
- 知的障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることができる。
(2)知的障害を認め, 家庭内での日常生活は普通にできるが,社会生活には援助が必要である。
- (1)のことが概ね自発的にできるが,時に支援を必要とする場合がある。
- 日常会話はできるが,抽象的な思考が不得手で,込み入った話は困難である。また簡単な漢字の読み書きはできる。
- 日常的な家事をこなすとはできるが,状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。身辺の清潔保持は困難が少ない。対人交流は乏しくない。ひきこもりがちではない。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。金銭管理はおおむねできる。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。
(3)障害を認め,家庭内での単純な日常生活はできるが,時に応じて援助が必要である。
- (1)のことを行うためには,支援を必要とする場合が多い。
- 具体的な事柄についての理解や簡単な日常会話はできるが,声掛けなどの配慮が必要である。ごく簡単な読み書きや計算はできるが,生活場面で実際に使うことは困難である。
- 医療機関等に行くなどの習慣化された外出は付き添われなくても自らできるものの,ストレスがかかる状況が生じた場合に対処すること困難である。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために,助言などの支援を必要とする。身辺の清潔保持が自発的かつ適切にはできない。適切な指導のもとで,社会的な対人交流や集団行動がある程度できる。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。適切な指導があれば単純作業はできる。
(4)知的障害を認め,日常生活における身のまわりことも,多くの援助が必要である。
- (1)のことは,経常的な援助がなければできない。
- 読み書きや計算は不得手だが,簡単な日常会話はできる。生活習慣になっていることであれば,言葉での指示を理解し,ごく身近なことについては,身振りや短い言葉で自ら表現することができる。日常生活では,経常的な支援を必要とする。
- 例えば,親しい人との交流も乏しくひきこもりがちである。自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。保護的な環境下で専ら単純かつ反復的な作業はできる。
(5)知的障害を認め,身のまわりのこともほとんどできないため,常時の援助が必要である。
- (1)のことは援助があってもほとんどできない。
- 言葉の理解も困難またはごく身近なことに限定されており,意思表示はごく簡単なものに限られる。
- 入院・入所施設内においては,病棟内・施設内で常時個別の援助を必要とする。在宅の場合においては,医療機関等への外出も自発的にできず,付き添いが必要である。家庭生活においても適切な食事を用意したり,後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず,常時の援助を必要とする。
日常生活能力の7項目
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬(要・不要)
- 他人との意思伝達及び対人関係
- 身辺の安全保持及び危機対応 安全保持 危機対応
- 社会性
診断書では,上記7項目について,それぞれ次の4段階で評価することとなっています。
- できる
- 自発的に(またはおおむね)できるが時には助言や指導を必要とする。
- (自発的かつ適正に行うことはできないが)助言や指導があればできる。
- 助言や指導をしてもできない若しくは行わない。
障害等級の目安
判定平均/程度 | (5) | (4) | (3) | (2) | (1) |
---|---|---|---|---|---|
3.5以上 | 1級 | 1級又は2級 | |||
3.0以上 3.5未満 | 1級又は2級 | 2級 | 2級 | ||
2.5以上 3.0未満 | 2級 | 2級又は3級 | |||
2.0以上 2.5未満 | 2級 | 2級又は3級 | 3級又は 3級非該当 | ||
1.5以上 2.0未満 | 3級 | 3級又は 3級非該当 | |||
1.5未満 | 3級非該当 | 3級非該当 |
- 表の見方
- 「程度」は,診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」の5段階評価を指す。
- 「判定平均」は,診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の4段階評価について,程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え,その平均を算出したものである。
- 表内の「3級」は,障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換えることとする。
ポイント
- 【原則】標準的な治療(薬物治療の場合は,目的,処方薬の種類,処方箋,服薬状況も考慮)を実施したうえで,なお症状が継続咲いている場合にその状態で認定される。
※通院や薬物治療が困難な場合,その理由等も考慮される。 - 診断書の「日常生活能力の判定」は,単身生活での可否で判断される。
➡ 各項目の評価について,単純動作の出来ではなく,自発性・計画性など広い観点で見られる。実際にどういったことが困難で,どういう援助(注意や声掛けなの広範なもの)を受けているか,必要なのかが,実際の認定で重視される。 - 就労の有無は,認定上のウエイトが大きい。ただし就労の事実で障害年金の支給の可否を判断されるものではない。
➡ 職種や仕事内容,仕事の状況,就労先で受けている援助内容,他の従業員との意思疎通状況,勤続(就労の継続性),勤務時間,勤務日数,遅刻,欠勤等勤怠状況,通勤手段や通勤時間,就労の影響(職場以外での日常生活能力の状況)から総合的に判断される。 - 照会文書(「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」)について
➡ 「等級判定ガイドライン」とともに導入された。認定の審査段階において必要とされた場合に求められる文書。一人暮らし,就労している場合に送られてくる場合が多い。事前に作成しておくことで,日常生活や就労の状況の詳細を補足することができる。
精神の障害区分について
精神の障害は,5つに区分されている
A 統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害
B 症状性を含む器質性精神障害
C てんかん
D 知的障害
E 発達障害
※症状性を含む器質性精神障害,てんかんであって,妄想,幻覚等のあるものは,Aに準じて取り扱いがなされる。
各区分ごとの認定要領
C てんかん
D 知的障害
E 発達障害
・ ・ ・ ・ ・
くわしく知りたい! ➡ そんなときは,お近くの社会保険労務士をご利用ください。
社会保険労務士(社労士:シャロウシ)は,労働・社会保険に関する法律の専門家,国家資格者です。
社会保険労務士について(全国社会保険労務士連合会のページへ)
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1st Upload 2021.10.12 No.5583
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