ダブルワーク、掛け持ち、副業の社会保険

2つ以上の会社を掛け持ちするときの社会保険について

最近「副業」されている方が多くみられますが、負担感が大きい社会保険。
「働いている会社ぜんぶ入らないといけないの?」
「加入するのかしないのかは個人の判断?」
ダブルワーク時の社会保険の取り扱いについてまとめてみました。

第一のチェックポイント:会社に雇われているか?

求人チラシやハローワークで会社の求人に応募して、会社に入った方は、問題なく「会社に雇われている人(=労働者)」で、働く時間の量によって社会保険に加入する対象になります
いっぽう、フリーランス等で「業務委託」の場合は、「会社に雇われている人(労働者)」ではないので、その働いている会社で社会保険に加入することはできません。

社会保険の種類と加入要件

会社で加入となる社会保険は以下の通りです。
働く時間数など、加入要件が決まっており、要件に該当すれば強制加入(加入をするかしないかの労働者の判断余地はなし)

  • 労災保険
  • 雇用保険
  • 健康保険と厚生年金保険

労災保険

仕事中にケガ等したときに治療費のほか、障害や万一死亡した場合の給付、休業時の給付などがある。
基本的に会社で働いている人(労働者)は加入条件なしで全員加入。保険料は全額会社負担で、労働者の負担はなし。

雇用保険

会社を辞めたとき(離職したとき)の収入保障としての給付(育児休業時も対象)。ほかにも教育訓練を受けたときの給付などもある。

2021(令和4))年1月からの加入対象は以下にあてはまる方。
 ・1週間の所定労働時間が20時間以上
 ・31日以上の雇用見込みがある
 ※収入金額は加入要件には入っていません。

保険料は、会社の業種、本人の給与額によって決まり、会社と本人で負担する。

健康保険と厚生年金保険(←まとめて「(狭義の)社会保険」という)

健康保険は、医療機関等で、プライベートのケガや病気の治療等を受ける場合に、給付を受けることができる。その他、プライベートで働けないときの給付もある。
厚生年金保険は、老齢によって働けなくなったときの給付(いわゆる年金)、ケガ等で障害状態になったときの給付、万一死亡したときの給付等がある。

会社が適用事業所である場合、以下の被保険者要件を満たす場合は,加入手続きが必要。
 ・所定労働日数・所定労働時間の4分の3以上(一般的に週の労働時間が30時間以上)
 ・75歳未満(健康保険),70才未満(厚生年金保険)
※さらに2022(令和4)年10月からは、対象が拡大され、以下のすべてに該当する場合も加入となる。
 ・1週間あたりの労働時間が20時間以上
 ・1ヶ月あたりの賃金が88,000円(年収106万円)以上
 ・雇用期間が継続して2月以上
 ・学生でない
 ・従業員規模が501人以上の会社で働いている(または、500人以下の会社でも労使合意がなされている)

保険料は、本人の収入によって決まり、会社と本人で負担する。

2社以上を掛け持ちした場合はどうなる?

労災保険

それぞれの会社で加入。
もともと、「労災保険」は、仕事中にケガ等をしたときに会社が労働者に必要な補償するために加入が義務付けられているものなので、それぞれの会社で完結させることから、掛け持ち勤務者であろうと関係ない、という考え方になります。

雇用保険

基本的な考え方は以下の通りです。
雇用保険は、主に労働者が仕事を辞めた(離職した)ときの収入保障としての位置づけであることから、複数の会社で働く場合はチョット複雑です。ポイントは以下の2点です。
・雇用保険の加入対象となるかどうか?←働く勤務先ごとに判断します。
・収入が一番多い勤務先はどこか?
つまり、①雇用保険の加入対象になっている勤務先で、かつ、②収入の一番多い勤務先での加入になります。たとえ収入が一番多い勤務先でも雇用保険の対象になっていなければその勤務先で加入することはできません。もちろん、勤務先のどれもが加入対象にならない場合は、どの勤務先の雇用保険にも加入できません。

ただし、ダブルワークされる65歳以上の方は、「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の対象として、上記とは別の考え方となる場合があります。詳細は↓のリンクからご参照ください。

健康保険と厚生年金保険((狭義の)社会保険)

さらに複雑になります。

①掛け持ちで複数の会社で加入要件に該当する場合

加入要件にあてはまる会社すべてで加入となる。
保険料は、収入を合算して、給与額等で会社ごとに按分する。
(「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を10日以内に提出)

②一つの会社のみで加入要件に該当

要件に該当する会社のみで加入となる。保険料は要件該当の会社のみで算出。

③すべての会社で加入要件に該当しない

健康保険と厚生年金保険((狭義の)社会保険)の加入資格なし。

ただし、以下の場合は要注意。

・1ヶ月あたりの賃金が88,000円(年収106万円)以上となる場合 ⇒ 加入要件に該当する可能性あり
・年収が130万円を超える場合 ⇒ 家族等の「扶養」から外れる場合あり

「扶養」についてはコチラをご参照ください↓

自営業との掛け持ちの場合は?

基本的な考え方は、上記の複数掛け持ちの場合と同じ。

労災保険

複数掛け持ちの場合と同じ。

雇用保険

複数掛け持ちと同じく、掛け持ち先の会社で、加入要件に該当すれば、雇用保険に加入となる。

健康保険と厚生年金保険((狭義の)社会保険)

複数掛け持ちと同じ。

ただし、健康保険については、掛け持ち先の会社で加入した場合、国民健康保険からの変更手続きを忘れずに。年金の場合は、国民年金から厚生年金へ変更となる。

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SR_Logo社会保険労務士(社労士:シャロウシ)は,労働・社会保険に関する法律の専門家であり,国家資格者です。人を大切にする企業づくりの支援をしています!

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1st Upload 2022.09.09 No.5915

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